/ 8/19大引け後・深夜版
半導体だけが取り残された夜
金利は下がり、米国株は反発し、暗号資産は急騰した。それでも半導体だけが売られ続けている。マクロが原因ではない、というのが今夜の結論だ。
データ時点: 日本株=8/19終値(kabuS検算済み)/米国株=8/20 03:09 JSTザラ場/為替・商品・暗号資産=8/20 03:09/先物=8/20 02:00 夜間
日経平均は65,326.42円(-2,134.31円・-3.16%)で大幅続落し、8/7以来およそ2週間ぶりに66,000円の節目を割り込んだ。2営業日で3,900円弱を失い、5連騰で積み上げた3,600円超をすべて返上した計算になる。前日8/18は値がさAI株に集中した下げだったが、8/19は33業種中31業種が下落、値下がり1,155銘柄に対し値上がり362銘柄と、売りが全面に広がった。
私が今夜いちばん重く見ているのは、この下げが「金利のせい」で説明できなくなった点だ。米財務省が長期債の買い戻しオペを2倍超に拡大すると発表し、米10年債利回りは4.67%へ急低下、ダウは4日ぶりに反発した。日本の新発10年債も一時2.9%を下回った。それでも東京は-3.16%、SOXは3日続落。同じ夜に暗号資産はBTC +5.37%・ETH +9.00%と急騰している。資金は市場の外へ逃げたのではなく、AIから別の場所へ移っただけ──そう読んでいる。
今日の要点
- 金利が下がっても半導体は売られた。 米10年債4.67%、日本10年債は一時2.9%割れでも SOX は-2.36%と3日続落。8/18の引き金だった金利上昇は、8/19の下落の主因ではなくなった
- 論点が「資金調達は続くか」から「投資先は伸びているか」へ深まった。 WSJのオープンAI業績報道を受けてソフトバンクGが-10.34%、単独で日経平均を485円押し下げた。答えは8/26のエヌビディア決算まで出ない
- テクニカルは需給局面に入った。 日経平均は25日線65,786円・75日線66,062円をともに割り、一目均衡表の雲の下へ。PER 16.88倍は直近39営業日の最低17.16倍(66,416円相当)を下回っており、「割高の修正」を通り過ぎている
ヘッドライン
WSJがオープンAIの成長鈍化を報道、ソフトバンクGが10%超安で日経の押し下げ首位に
日本時間19日朝、WSJがオープンAIの第2四半期業績を報じた。売上高は67億ドルで第1四半期の57億ドルから18%増にとどまり、営業損失(株式報酬含む)は93億ドルから123億ドルへ拡大した。一方でアンソロピックの売上高は倍以上の116億ドルとなり、初めてオープンAIを上回って小幅な営業黒字も計上している。オープンAI株を約13%保有するソフトバンクGは終値5,227円(-603円・-10.34%)で、日経平均を単独485.13円押し下げた。8/18付で報じられた個人向け社債1兆円規模の発行準備(利率4%台後半の見方)も重荷になり、情報・通信業は-3.25%だった。
前日の「ビッグテック9社の簿外AIコミットメント3兆ドル」報道に続く2本目のAI懐疑スクープで、論点が一段深まったのがこの日の本質だと思う。投資の資金調達が続くかどうかではなく、投資先の事業が本当に伸びているのか。オープンAIは損失が売上を上回るペースで拡大しており、IPOは遠のく。SBGにとっては保有資産の評価と1兆円社債の利払い負担が同時に問われる形になった。この1銘柄で指数が数百円動く寄与度の大きさも、東京にとっては無視できない。
見ておきたいのは、SBG 5,227円が20日安値4,500円に向かうのか、25日線5,573円を回復するのか。1兆円社債の発行条件の正式発表と、オープンAIのIPO申請の進捗も材料になる。
半導体だけが取り残される、SOXは3日続落でキオクシアは12.6%安の5万円割れ
キオクシアHDは49,950円(-7,200円・-12.60%)で5万円を割り込んだ。寄り前からソフトバンクG・フジクラとともに売り気配で始まり、日中値幅は8.13%。直接の波及元は8/18の米国市場でサンディスクが-9.01%と急落したことで、同社の第2四半期NANDフラッシュ売上高成長率50.7%は主要5社中で最下位だった。米国8/19セッションでもサンディスクは-4.19%と続落し、SOX指数は3日続落で5日では-5%超。米11セクター中8つが上昇するなかで、情報技術(XLK -0.95%)だけが取り残された。
米国株全体が反発し、暗号資産が急騰し、金利も低下したのに半導体だけが売られ続けている。これは「マクロが原因ではない」ことの決定的な証拠になる、と見ている。売られているのは、AI投資の中身は本当に伸びているのかという問いに答えが出ていないためで、その答えは8/26のエヌビディア決算まで出ない。金利低下の恩恵はむしろAI以外──ヘルスケア+3.13%、一般消費財+1.77%、素材+1.57%──に回っている。キオクシアは5日線・25日線をともに下回り(-9.01%・-7.33%)、75日線には-24.08%と大きく届かない位置にいる。ただし出来高は20日平均比0.98倍と平常以下で、2日連続で投げ売りは出ていない。
観測点は、出来高が20日平均比1.5倍を超えて下げるか(本格的な投げの判定基準)、5万円の節目の回復、サンディスク1,557.60ドルの引け値、そして8/26のエヌビディア決算。
暗号資産が急騰、SEC新規制案と14.4億ドルのショートスクイズでBTCが6万8000ドル台へ
BTCは68,153ドル(+5.37%・日中値幅6.94%)、ETHは2,088.91ドル(+9.00%・日中値幅9.42%=平常時の4.3倍)、SOLは81.53ドル(+5.84%)とそろって急騰した。きっかけは3つで、SECが暗号資産の新規制案を発表して暗号資産企業の資金調達の枠組みが示されたこと、米財務省の長期債買い戻しオペ拡大、そしてこれらを受けた14.4億ドル規模のショートポジションの強制決済。関連株もCircle +10.40%、Coinbase +9.90%、Strategy +11.58%と急伸している(いずれも8/20 02:50 JSTザラ場)。
意味が大きいのは資金の移動先だ。同じ日にSOXが3日続落する一方で暗号資産が急騰した。AIから抜けた資金が市場の外に出たのではなく、規制の明確化という新しい材料が出たセクターへ移っている。8/18・8/19に52週レンジ内位置2〜4%まで沈んでいたCoinbase・Strategyが真っ先に買われたのは、売られすぎの反動が効きやすい場所だったためだろう。Circleは所属するXLF(金融)が-0.23%と軟調ななかで逆行しており、金融株ではなく暗号資産インフラとして値付けされていることが改めて確認できた。
SEC規制案のパブリックコメント期間と最終化の時期、BTC 70,000ドルの節目、Circleの52週レンジ内位置29%からの回復度合い、国内のメタプラネット(3350)への波及を見ていく。
主要指数
| 指数 | 値 | 前日比 | 52週位置 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 65,326.42 | -3.16% | 77% | 8/19終値 |
| TOPIX | 4,012.31 | -3.09% | - | 8/19終値 |
| S&P500 | 7,711.99 | +0.26% | 94% | 8/20 03:09 JSTザラ場 |
| NASDAQ総合 | 26,319.85 | +0.11% | 88% | 8/20 03:09 JSTザラ場 |
| SOX | 11,709.54 | -2.36% | 68% | 8/20 03:09 JSTザラ場 |
| VIX | 15.19 | -4.10% | 10% | 8/20 03:09 JSTザラ場 |
| 日経VI | 32.44 | +6.33% | - | 8/19終値 |
| USD/JPY | 158.50 | -0.53% | 69% | 8/20 02:50(08/17→08/19) |
| BTC | 68,153.60 | +5.37% | 14% | 8/20 02:50 |
セクターは日本の33業種で上昇が医薬品+0.78%と海運業+0.23%の2つだけ、下落率トップは非鉄金属-8.33%(古河電-13.69%・フジクラ-9.73%)、次いでガラス・土石-5.40%、機械-5.10%、銀行業-4.64%。米国は上位がヘルスケア+3.13%・一般消費財+1.77%・素材+1.57%、下位が情報技術-0.95%・資本財-0.60%・金融-0.23%で、SOXを除けば米国株は反発局面にある。日経VIは日中高値38.08まで跳ねたあと32.44で引けた。
前回シナリオの答え合わせ
PARTIAL 8/19寄り前作成・8/19向け「大幅ギャップダウン後、25日線65,862円・75日線65,990円が重なる65,900円台を意識した下げ渋り。想定レンジ65,700〜67,000円」
日経平均は65,326.42円(-3.16%)で大幅続落し、メインの「下げ渋り」は外れた。ただしリスクシナリオ(25%・64,500〜65,700円)のレンジに終値が収まり、そのトリガー「25日線65,862円を明確に割り込んで引ける」も的中している。寄り付きの位置(「66,000〜66,400円が中心」に対し日経225先物の寄りは66,150円)、25日線が分岐点だという読み、キオクシアの「5日線54,878円割れ」、さくらインターネットの「寄り天で4,000円割れ」(終値3,915円・-8.95%)はいずれも当たった。
外したのは確率配分だ。前日のmissで「一極集中は崩れるときも一極集中で崩れる」と学んだのに、その巻き戻しが2日目も続く可能性を過小評価してメインを下げ渋りに置いた。金利のトリガーも逆に出た。リスク側に「日本10年債が3.0%乗せ」を置いたが、実際は需給対策期待で一時2.9%割れまで低下し、それでも株は-3.16%だった。金利上昇は8/18の引き金にすぎず、8/19の主因ではなかった。さらにソフトバンクGを見落とした。押し下げ首位は前日のアドバンテスト・東エレクではなくSBGの-485.13円で、社債1兆円報道とWSJのオープンAI報道を朝のヘッドラインに拾えていなかった。「資源・海運が逆行高で下支え」という物色の読みも、値下がり1,155対値上がり362の全面安の前では外れている。
累計の検証は9件、hit 4・partial 3・miss 2、的中率61.1%(8/19時点)。
今日のシナリオ
8/20の東京向け。夜間先物は66,090円(現物比+764円)で、米国株の反発と金利急低下を受けて買い先行で寄る前提。ただしFOMC議事要旨の公表後にSOXが-2.02%→-2.36%と下げ幅を広げており、半導体は戻りが鈍いと見ている。
米国株の反発と金利急低下を受けて買い先行で寄るが、25日線65,786円・75日線66,062円・期間最低PER相当の66,416円が重なる帯が戻り売りの壁になる。物色はAI・半導体を避け、暗号資産関連・医薬品・内需へ向かう二極化を想定する。8:50の7月貿易収支を消化した後、この帯を上抜けられなければ上値の重さが確認される。売買代金が8/19の10兆1,151億円を下回るなら戻りは限定的と見る。
米国8/19セッションが05:00の引けまでプラスを維持し、SOX 11,709.54が引けにかけて下げ幅を縮める。BTC 68,153ドルが70,000ドルを試し、メタプラネットなど国内の暗号資産関連が指数を押し上げる。25日線65,786円・75日線66,062円・66,416円の3つの節目をすべて上抜けて引ければ、このシナリオに移る。
議事要旨で判明した「3名が利上げに票を投じ、その論拠がAI投資ブームによるインフレ定着だった」という事実が、AI関連の評価見直しをさらに促す場合。SOXの下げが引けまで続けばキオクシア・アドバンテストの下げは4日目に入り、ソフトバンクGが戻せず20日安値4,500円方向へ。ボリンジャー-1σ 63,695円が下値目処になる。
無効化条件: 米国株が高く引けドル円も158円台を維持したのに、終値で65,800円を下回る。または新規材料なしに66,600円を超えて引ける。どちらも読みの前提が崩れているので、別の要因を探して組み直す。
観測点は、米国8/19セッションの引け値(SOX 11,709.54がどこまで戻すか、サンディスク1,557.60ドル)、米10年債4.67%の方向、夜間先物66,090円が朝まで維持されるか、25日線65,786円・75日線66,062円・66,416円の3つの節目をどこまで抜けるか、ドル円158.50円、BTCの70,000ドル乗せ、東証プライムの値上がり/値下がり銘柄数(8/19は362対1,155)。半導体が指数の戻りについてこられるかが、AI売り終息を測る唯一の物差しになる。
注目カレンダー
- ★ 8/20 03:00 JST — FOMC議事要旨(7月分)。公表済み。3名が0.25%利上げに票、論拠は「AI投資ブームがインフレを定着させかねない」。9月利上げ織り込みは34%へ低下
- ★ 8/20 05:00 JST — 米国8/19セッション引け。SOXがマイナスのまま引けるかが半導体の判定材料
- ★ 8/20 — JPX投資部門別売買動向(8/10〜8/14週)。「5連騰は外国人の現物買いだったか」の答え合わせ。8:50には7月貿易収支(予想-6,650億円)も