/ 9/4朝刊
円高と半導体の出遅れ
ウォラーFRB理事のハト派発言でNYダウは624ドル高。だが同じニュースが円高も連れてきて、SOXだけが+0.11%と取り残された。米株高は東京に半分しか届かない朝になる。
データ時点: 米国株・SOX・セクターETF・商品・暗号資産=9/3終値/日本株=9/3大引け/為替=9/4 08:20頃/需給=8/24〜8/28週/PER=9/3時点
昨夜の米国市場は、一つの発言で景色が変わった。ウォラーFRB理事が「インフレ緩和が指標で確認できれば据え置きを支持し得る」と述べ、9月FOMCの利上げ確率は62.4%から50.4%へ落ちた。NYダウは+624.16ドル(+1.18%)、S&P500 +1.06%、NASDAQ +1.40%。3指数が揃って1%超上げた。
ただしこの材料は、日本株にはプラスとマイナスの両方で届く。金利低下は割引率を下げて高PER株の追い風になる一方、日米金利差の縮小観測はドル売り・円買いに直結する。実際ドル円は156.05円(−1.81%)まで下げ、米市場では一時155円30銭と約1カ月ぶりの円高をつけた。そのうえ米ハイテク高の中でSOX指数だけが+0.11%と取り残されている。シカゴ先物は大取終値比+330円で、寄り高スタートはほぼ確定的だ——問題は、その寄り高に追随買いが入るかどうかにある。
今日の要点
- ウォラーFRB理事のハト派転換で米年内利上げリスクが後退し、米3指数は揃って1%超高。ただし同じ材料が日米金利差の縮小観測を通じて円買いも呼んでおり、日本株には追い風と逆風が同時に届く。
- ドル円156.05円は輸出企業の想定為替レート(150〜155円が中心)に接近する水準。円高は輸出・半導体には逆風だが、内需・小売・電力ガスには原価改善の追い風として働く。
- ブロードコムは全項目ビートの決算でも−2.74%で、SOX指数は+0.11%。米ハイテクが全面高になる日に半導体だけ上がらないのは、資金がAI半導体からAIソフト・インフラへ移った形であり、東京の半導体株は米株高の恩恵を素直に受けにくい。
ヘッドライン
ウォラーFRB理事がハト派へ転じ、NYダウは624ドル高
9/3の講演で、ウォラーFRB理事はインフレ緩和が指標で確認できれば据え置きを支持し得ると発言した。CME FedWatchの9月FOMC据え置き確率は37.6%から49.6%へ上がり、利上げ確率は62.4%から50.4%へ低下。NYダウは53,686.11ドル(+624.16ドル・+1.18%)、S&P500は+1.06%、NASDAQは+1.40%で、米10年債利回りは4.76%(−0.71%)へ下がった。
経路は2本に分かれる。一つは利上げ観測後退→米長期金利低下→割引率低下→高PER株の割高感が薄れる流れで、これは日米のグロース株に追い風になる。もう一つは日米金利差の縮小観測→ドル売り・円買いで、こちらは日本の輸出には逆風だ。同じニュースが日本株には正反対の二方向から届く点が、今日の読みを難しくしている。
観測点は本日21:30の米8月雇用統計、米10年債4.76%が4.70%を割るか、FedWatchの利上げ確率50.4%が5割を割るか。なお同じ9/3には米ISM非製造業が55.4と堅調で、仕入れ価格72.6は約4年ぶりの高水準だった。ハト派材料とインフレ材料が同居している点は割り引いて見る必要がある。
ドル円が一時155円30銭、日米の双方向から円が買われた
ドル円は156.05円(−1.81%)。米市場では一時155円30銭と約1カ月ぶりのドル安・円高水準をつけ、9/3の東京大引け時点の156.41円からさらに円高方向へ進んだ。ユーロ円は181.40円(−1.47%)、ユーロドルは1.1628(+0.37%)で、円はドルにもユーロにも上昇している。ユーロドルがほとんど動いていないことが、これがドル全体の変動ではなく円高であることの裏づけになる。
原因は日米の双方から来ている。日銀の9/17-18会合での50bp利上げ観測が円買いを、FRBの利上げ観測後退がドル売りをそれぞれ生み、二つが同じ方向に重なった。輸出企業の想定為替レートは150〜155円が中心で、155円接近は業績下方修正の連想を呼ぶ水準にある。裏を返せば、内需・小売・電力ガスには原価改善が効く。
観測点は155円の攻防。ドル円のRSI(14)は29.6と売られ過ぎ圏にあり、自律反発が出やすい位置ではある(52週レンジ内位置55%)。日本10年債2.965%が3%へ戻すかどうかも合わせて見たい。
ブロードコムは好決算でも−2.74%、SOXだけが+0.11%
ブロードコムのFY26 Q3は売上296億ドル(予想約294億・前年比+86%)、非GAAP EPS 3.32ドル(予想3.21〜3.24ドル)、AI半導体売上167億ドル(+221%・全体の56%)。Q4ガイダンスも売上348億ドル(+93%)と数字自体は強い。それでも9/3の株価は357.16ドル(−2.74%)で終わり、SOX指数は11,352.13(+0.11%)と横ばいだった。
「良い決算でも上がらない」は、期待がすでに株価に織り込まれ切っている証拠になる。米ハイテク全体が上がる日にSOXだけ上がらないのは、資金がAI半導体からAIソフト・インフラへ移ったと読むのが素直だ。同じ日にSNOW +16.55%、ORCL +5.69%、HPE +5.04%、DELL +4.91%と、動いたのは半導体の外側だった。この構図が続く限り、東京の半導体株は米株高の恩恵を素直には受けにくい。
観測点はSOXの5日騰落−4.46%を取り戻せるか。NVDAは228.45ドル(52週位置90%)で52週高値235.74ドルまでまだ距離がある。時間外はNVDA +0.44%、SNDK −0.44%、MU −0.43%とほぼ動いていない。
主要指数
| 指数 | 値 | 前日比 | 52週位置 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 64,214.48 | −0.17% | 73% | 9/3大引け |
| TOPIX | 4,102.04 | +0.50% | - | 9/3大引け |
| S&P500 | 7,747.71 | +1.06% | 96% | 9/3終値 |
| NASDAQ総合 | 26,584.06 | +1.40% | 92% | 9/3終値 |
| SOX指数 | 11,352.13 | +0.11% | 63% | 9/3終値 |
| VIX | 14.32 | −5.79% | 5% | 9/3終値 |
| ドル円 | 156.05 | −1.81% | 55% | 9/4 08:20頃 |
| BTC | 81,209.20 | +5.06% | 34% | 9/3終値 |
前回シナリオの答え合わせ
PARTIAL
9/3向けのシナリオは partial 判定になった。日経平均は64,214.48円(−111.16円・−0.17%)で4日続落。始値64,724.81円は前日比+399円のギャップアップで、しかもそれが当日の高値という2日連続の「陰の寄り付き坊主」だった。想定レンジ64,400〜65,800円に対し終値は下限を186円(0.29%)下回り、無効化条件に書いた「ギャップアップで寄ったのに終値で前日終値を下回る」が文字どおり成立している。それでも partial としたのは、日中の流れ——寄り高の幅は限定的、25日線に届かず失速——がほぼ書いたとおりに実現し、リスクサブに置いた「円高加速で輸出関連の買い材料が消える」も明確に点灯したためだ。
最大の誤りは分岐点の置き方にあった。30年債入札を当日の最大の分岐と見たが、入札は応札倍率3.79倍・平均落札利回り4.079%で無難に通過し、10年債は2.965%へ低下したのに株は上がらなかった。強気サブのトリガーが点灯したのにメインレンジも下回ったわけで、真の主因は為替だったことになる。金利低下と円高が「日銀利上げ観測」という同じ原因から生じたため、金利低下=株の追い風という通常の経路が反転した。教訓は、金利を主軸に置く日は、その変動が財政・インフレ由来なのか金融政策由来なのかを区別し、後者なら為替を独立した観測軸として同格に置くこと。加えて、指数寄与度上位銘柄の月次動向(9/3はファーストリテイリングが単独で193円分の押し下げ)と韓国KOSPIを観測項目に入れていなかった点も見落としだった。
累計成績は検証18件・的中率69.4%(hit 9 / partial 7 / miss 2)。
今日のシナリオ(9/4)
米株高と円高が打ち消し合い、物色は内需・小売・電力ガス優位で輸出・半導体は上値が重い——TOPIX優位・日経足踏み(NT倍率15.65)の構図が続く形を本線とみる。根拠はシカゴ日経平均先物が大取終値比+330円で寄り高スタートがほぼ確定的なこと、9/2・9/3と2営業日連続で始値が当日高値になり寄り高に追随買いが入らない地合いが定着していること、SOXが+0.11%と出遅れて半導体が主導役になれないこと、ドル円156.05円が輸出企業の想定為替レートに接近していること。加えて金曜かつ21:30に米雇用統計という東京の引け後イベントを控え、後場は持ち高調整で値幅が縮小しやすい。ドル円が155.5〜156.5円で膠着し、日経が5日線65,495円に届かないまま前場を終えれば本線どおり。終値で65,300円超または64,400円割れなら、この読みは外れと判断する。
ドル円が157円台を回復し、SOXの出遅れ修正でアドバンテスト・東京エレクトロンが寄りから上値を追う展開。日経が5日線65,495円を明確に上抜ければ25日線(9/3時点65,833円)を試す余地がある。ドル円のRSI(14)は29.6と売られ過ぎ圏で自律反発が出やすく、日経も4日続落でRSI 41.2、PERは17.19倍・期間レンジ内位置23%と割安側に振れている。
ドル円155円割れ、または日銀の50bp利上げを裏づける追加報道が出た場合。韓国KOSPIの軟化が後場に効く形も想定に入る。下値の目安は9/3の20日安値63,772.80円。日経VI 28.32とヘッジコストが高く、上値では売りヘッジが出やすい。PER 17倍ラインは63,505円で、20日安値のすぐ下にある。
時間帯別には、寄りはシカゴ先物+330円・NYダウ+624ドル・ADRのドル換算全銘柄プラスを受けて64,500〜64,900円での買い先行スタート。前場は5日線65,495円の手前で伸び悩み、プラス圏は維持しやすいものの2営業日連続の寄り天という地合いを前提に置く。後場は値幅縮小で、売買代金が7兆円台前半に細るなら需給主導のもみ合いになりやすい。
なお本日はkabuステーションが停止中で、寄り前気配・東証33業種の当日騰落率・確定出来高は取得できていない。寄り付き予想はシカゴ先物・米国セッション・時間外・ADR乖離からの推定である。
注目カレンダー
- ★ 9/4(金)21:30: 米8月雇用統計 — NFP予想+5.5〜5.8万人/失業率4.1%(前月4.2%)/平均時給+0.3%。FOMCの利上げ判断を左右する最大の材料で、東京の引け後に出る
- ★ 9/9(水): 米アップル新製品イベント(折り畳み型スマホ発表へ) — 部品サプライヤーと半導体に波及
- ★ 9/11(金): メジャーSQ + 米8月CPI(21:30 JST) — 今後2週間で最も荒れやすい日。9/3のISM仕入れ価格72.6が先行指標になる