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金利と金が同時に上がる週
米長期金利が1年の最高水準に戻る一方で金と暗号資産も買われている。教科書と逆の組み合わせが、8/24の対イラン制裁から始まるイベント3段構えの前に置かれた。
データ時点: 日本株=8/21終値/米国株=8/21終値/暗号資産=8/23 10:00 JST
米10年債利回りが4.74%まで戻り、それでも金が4,680ドルへ急伸している。金利が上がれば金は売られる、というのが教科書の順序だが、今週はその逆が同時に起きた。金利で説明できない買いが金・銀・暗号資産に入っているとしたら、その正体は法定通貨と財政への不信で、株式からは相対的に資金が抜けやすい局面だと私は読んでいる。
日経平均は8/21に66,016.36円(-0.30%)で反落し、25日線と75日線の両方を終値で下回った。ただし指数の弱さの裏で海運・鉱業・石油石炭が原油高で買われ、TOPIXは+0.19%と逆に上げている。指数と中身が別の方を向いている週だ。ここに8/24(月)の対イラン新制裁、8/26(現地)のNVIDIA決算と米PCE、8/27からのジャクソンホールが3段で控える。次の取引日8/24は、最初の1段を見てから動く日になる。
今日の要点
- 米10年債4.74%は52週レンジ内位置99%、直近1年の最高水準。 8/18の財務省による長期債買い戻し倍増で一時4.67%まで下げたが、1営業日で戻しており、市場は「規模が小さく効果は限定的」と評価している
- 金4,680ドル・銀69.5ドルが金利高と同時に上がっている。 米政府債務40兆ドル、9月利上げ確率の後退(CME FedWatchで約30%)、中銀の買いが背景で、金利相場の枠組みが崩れているサインになる
- イベントは3段構え。 8/24の対イラン制裁(原油・海運・資源)、8/26現地のNVIDIA決算と米PCE(半導体と金利)、8/27〜29のジャクソンホール(ウォーシュ新FRB議長の初登壇)。順に答えが出てくる
ヘッドライン
米長期金利が4.74%へ戻し、財務省の買い戻し拡大策は1営業日で剥落した
米10年債利回りは8/21に4.74%(前日比+0.89%)で引け、52週レンジ内位置は99%と直近1年で最も高い水準に戻った。8/18に米財務省が長期債の買い戻しオペを1回20億ドルから40億ドル超へ倍増すると発表し、いったん4.67%まで低下したが、効果は1営業日しか続かなかった。
金利上昇は割引率を通じてPERの高いAI・半導体株の割高感を強め、調達コストを通じて利益そのものも圧迫する。日本株には日米金利差を通じても波及し、8/21の東京が寄りから売られた最大の理由がこれだった。市場の評価は「買い戻しの規模が小さく、持続的に押し下げる力はない」に落ち着いている。
4.74%が節目の5.0%へ向かうのか、4.65%を割り込むのか。8/26現地の米PCEデフレーターと8/27〜29のジャクソンホールが次の判定材料になる。
トランプ政権が「前例のない経済戦争」を予告、対イラン新制裁は8/24発表予定
トランプ大統領は8/19、イランに対する新たな経済制裁を近く発表するとSNSで表明し、「前例のない規模の経済戦争になる」と予告した。各国に対イラン支援の停止も要求している。正式発表は8/24(月)の予定で、原油はブレント94.39ドル(+0.65%・5日+6.63%)、WTI 87.06ドル(-0.88%・5日+5.66%)と週を通じて水準を切り上げた。
供給途絶懸念から原油高、インフレ懸念、長期金利上昇という経路で上のヘッドラインと合流し、株式全体には逆風になる。ただ同じ材料が逆の面も持っていて、原油高は海運(運賃上昇・迂回需要)・鉱業・石油石炭には直接の買い材料になる。8/21の東証で海運業+4.92%が上昇率トップだったのはこの経路で、指数を押し下げる材料が一部セクターを押し上げていた。
焦点は制裁が中国を巻き込む形に踏み込むかどうか。株探の週末コメントは「中国を巻き込めなければ材料としては一過性で終わる可能性が高い」と評価している。ブレントの100ドル乗せも観測点になる。
金4,680ドル・銀69.5ドルが急伸、「金利高と金高の同時進行」が鮮明に
金COMEXは4,680.60ドル(+3.64%・5日+6.85%・1ヶ月+15.67%)、銀は69.53ドル(+2.21%・1ヶ月+20.30%)へ上昇し、銅も6.59ドル(+1.97%)で52週レンジ内位置95%にいる。背景として報じられたのは、米政府債務が過去最高の40兆ドルに達したこと、9月利上げ観測の後退(CME FedWatchで利上げ約30%・据え置き約70%)、中国を中心とした中央銀行の買い増しだ。
教科書どおりなら金利上昇は金の逆風になる。金は利息を生まないので、金利が上がるほど保有の機会費用が増えるからだ。それでも買われているのは「金利で説明できない買い」が入っているためで、その正体は法定通貨と財政への不信だと思う。この構図が続く限り資金は金・銀・暗号資産へ向かい、株式からは相対的に抜けやすい。暗号資産が週間+22%、BTCが8/23 10:00 JSTで77,337ドルまで来ているのも同じ文脈で読める。
金の5,000ドル、銀の70ドル乗せ。そして米10年債利回りと金価格が同方向に動き続けるかどうか。逆方向に戻れば、通常の金利相場に復帰したサインになる。
主要指数
| 指数 | 値 | 前日比 | 52週位置 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 66,016.36 | -0.30% | 79% | 8/21終値 |
| TOPIX | 4,067.29 | +0.19% | - | 8/21終値 |
| S&P500 | 7,674.37 | +0.43% | 91% | 8/21終値 |
| NASDAQ総合 | 26,180.46 | +0.43% | 85% | 8/21終値 |
| NYダウ | 53,277.01 | +0.98% | 88% | 8/21終値 |
| SOX | 11,740.37 | -0.51% | 68% | 8/21終値 |
| VIX | 15.13 | -5.50% | 9% | 8/21終値 |
| CME日経先物(9月限) | 65,915 | +0.50% | 78% | 8/21終値 |
| BTC | 77,337 | -(8/22欠損) | - | 8/23 10:00 JST |
BTC・ETH・SOLは8/22の足が欠損しているため、前日比は1日分として扱えない。セクターは日本の上位が海運業+4.92%、鉱業+2.18%、石油・石炭製品+2.09%と原油高の受益、保険業+1.89%は長期金利上昇の運用利回り改善で買われた。米国は素材+2.14%が金・銀・銅の同時高で上位、公益-2.28%が長期金利上昇の直撃で下位。日米とも「金利と資源」で物色が決まっている。
前回シナリオの答え合わせ
HIT 8/20作成・8/21向け「売り先行で寄り、下げ幅縮小。想定レンジ65,400〜66,300円」
日経平均は66,016.36円(-200.43円・-0.30%)で反落し、メインシナリオ(50%)のレンジに終値が収まった。米長期金利の再上昇と米小売決算を受けて寄りから売られ、10時頃には下げ幅950円(安値65,267円近辺)まで拡大してから戻すという時間帯の流れも合っている。観測点に置いた「売買代金がさらに減るか」は7兆9,134億円へ約7,000億円減って的中、「銀行株が5日ぶりに反発するか」も+1.03%で的中した。
外したのは3点ある。まず「25日線65,724円・75日線66,154円が下値支えになるか」はザラ場で両方を割り込み、終値も両線の下に沈んだ。レンジは当たったがテクニカルの読みは外れている。次に、原油高をリスクシナリオの下押し材料としてしか扱わず、海運+4.92%・鉱業+2.18%・石油石炭+2.09%という「資源株の買い材料」の面を見ていなかった。悪材料は必ず誰かの好材料になる。最後に、下げ幅縮小のきっかけを韓国株の上昇と特定できていなかった。SKハイニックスが8/21に1,730,000ウォン(+2.31%)へ上昇し、それが日本の半導体株の買い戻しを誘った。アジア時間の先行指標として、韓国メモリ2社の寄り後の動きは毎回見る。
累計の検証は11件、hit 6・partial 3・miss 2、的中率68.2%(8/23時点)。
今日のシナリオ
次の取引日8/24(月)の東京向け。対イラン制裁が「時刻未定」で出てくる日で、その中身と米10年債の方向で寄り後の値動きが決まると見ている。CME日経先物は65,915円(+0.50%)で、前週末終値からはやや高い位置にある。
米国株が8/21に3指数そろって上昇した流れとCME先物の水準に沿って買い先行で寄るものの、週後半にNVIDIA決算・PCE・ジャクソンホールを控えて方向を決めきれない。25日線65,724円・75日線66,154円の付近で売り買いが交錯し、終値はレンジの中で収まる想定。
対イラン制裁が原油高を伴い、海運・鉱業・石油石炭の物色が続く。日経平均が25日線・75日線を上抜けて維持し、米10年債が4.65%以下へ低下すれば、このシナリオに移る。
制裁が中国を巻き込む形に踏み込み、ブレントが100ドルを試す。米10年債が5.0%方向へ向かい、8/19安値65,326.42円を明確に割り込む場合。指数はこちらに向かい、資源株だけが逆行高する構図を想定する。
無効化条件: 対イラン制裁が想定内にとどまり米金利も上昇しなかったのに、終値で65,400円を下回る。または新規材料なしに66,600円を超えて引ける。どちらも「材料と違う動き」で、そのときは別の要因が動いていると考えて読みを組み直す。
観測点は、8/24の制裁内容(中国を巻き込むか)、ブレント94.39ドルの100ドル接近、米10年債4.74%の方向、25日線65,724円・75日線66,154円の攻防、SKハイニックスの寄り後の動き、キオクシアHD 54,320円が価格帯別出来高の最厚帯(48,800〜55,190円)の上限を抜けるか、BTCの80,000ドル。
注目カレンダー
- ★ 8/24 時刻未定 — トランプ政権の対イラン新経済制裁 発表予定。中国を巻き込むかが焦点で、原油・海運・資源に直撃
- ★ 8/26 21:30 JST — 米7月PCEデフレーター。FRBが最も重視するインフレ指標で、ジャクソンホール直前の判定材料
- ★ 8/27 05:20頃 JST — NVIDIA FY27 Q2決算(現地8/26引け後)。会社ガイダンス売上約910億ドルに対し市場予想930〜950億ドル。同日ジャクソンホール開幕(〜8/29)、ウォーシュ新FRB議長の初登壇