/ 8/24大引け後版

メモリだけが崩れた日

サムスンの株主還元失望がメモリ株を日米韓で連鎖安にした。ただし装置株は上げていて、崩れたのは市況と還元の期待だけだと読んでいる。

データ時点: 日本株=8/24大引け確定/米国株=8/24ザラ場(22:46 JST・寄り後約15分)/暗号資産=8/24 22:46 JST/為替=08/20→08/24の対比/需給=8/10〜8/14週/PER・EPS=8/21時点

今日の日本株は「メモリだけが崩れた日」だった。日経平均は65,528.09円(-488.27円・-0.74%)で反落したが、TOPIX連動ETFは+0.14%、33業種のうち20業種が上昇している。指数を押し下げたのはアドバンテスト(寄与度-337.90円)とソフトバンクG(-225.27円)の2銘柄で計563円分。AI設備投資サイクルに最も敏感な2銘柄が売られ、それ以外は静かだった、というのが実態に近い。

私が注目しているのは、東京エレクトロン+1.58%とキオクシアHD-6.24%が同じ日に並んだことだ。装置株(設備投資サイクル)とメモリ株(市況と株主還元)は別の材料で動いている。AIメモリ需要そのものが弱まった話ではなく、上げすぎた後の持ち高調整にサムスンの還元失望が着火した──そう読んでいる。東証プライムの売買代金は7兆636億円と8/21の7兆9,134億円からさらに細り、売り込まれたというより買い手が引いた相場だ。

今日の要点

  • サムスンの株主還元計画が失望を呼び、メモリ株が日米韓で連鎖安になった。 サンディスク-10.43%、マイクロン-6.34%、キオクシアHD-6.24%と、還元期待の巻き戻しがそのまま銘柄の並びに出ている
  • 米加通商交渉が決裂し、50%関税が発動した。 「関税→資材コスト上昇→インフレ再燃→利下げ観測の後退」の経路で、米10年債4.71%は52週レンジ内位置95%の高値圏にあり、高PER株に逆風になりやすい
  • 今週はNVDA決算・米PCE・ジャクソンホールが3段構えで並ぶ。 東京の値動きの多くは「イベント前にポジションを落とす」動きで説明でき、8/25も方向を出しにくい

ヘッドライン

サムスンの株主還元計画が失望を呼び、メモリ株が日米韓で同時に崩れた

サムスン電子は8/23に2026年の株主還元計画(90兆〜110兆ウォン、約650億〜794億ドル)を承認したが、8/24のソウル市場で株価は一時-9.4%の25万5,000ウォンまで下落した。2020年の過去最高還元の5倍という規模にもかかわらず、自社株の消却計画にも還元方針の引き上げにも言及がなく、40兆ウォンの自社株買い・消却を明言したSKハイニックスと比べられて失望を招いた。

波及経路は「サムスンの還元失望→韓国メモリ2社の下落→メモリ業界の株主還元期待の巻き戻し→米メモリ株の投げ→日本のNAND関連」で、実データがその順に並ぶ。サンディスク-10.43%、ウエスタンデジタル-7.14%、マイクロン-6.34%、キオクシアHD-6.24%。SOX指数は-3.16%だが、東京エレクトロン+1.58%とは明確に差がついた。AIメモリ需要が弱まったのではなく、上げすぎた後の持ち高調整に還元失望が着火した動きだと見ている。

見るべきは8/25のSKハイニックス・サムスンの寄り付き方向、NANDスポット価格、そしてキオクシアHD 50,930円が価格帯別出来高の最厚帯下限48,800円を守れるかどうか。ここを割ると調整が一段深くなる可能性がある。

米加通商交渉が決裂、50%関税が発動。カナダは9/8から「ドル対ドル」で報復

米加の通商交渉は8/21金曜深夜に決裂し、1930年関税法338条を根拠とする追加50%関税が発動した。対象はアルコール・ホッケー用品・セメント・乳製品など。カーニー加首相は8/22に「誤算だ」と述べ、9/8から同額の報復関税を課すと表明している。米側が土壇場で条件を変更した、というのがカナダ側の説明だ。

カナダは米国の第2位の貿易相手で、原材料と自動車部品のサプライチェーンが両国にまたがる。経路は「関税→米国内の資材コスト上昇→インフレ再燃→利下げ観測の後退→高PER株の割高感」。今日の米国市場で素材XLB+1.20%が上位、ハイテクXLK-2.02%が最下位という並びはこの経路と整合する。9/8の報復発動までが交渉再開の猶予期間になるため、報道1本で振れやすい局面が続く。

観測点は9/8までの交渉再開報道、XLB(52週レンジ内位置100%)が高値圏を維持するか、米10年債4.71%がインフレ懸念で4.8%方向へ戻すか。

今週はNVDA決算・米PCE・ジャクソンホールが3段構えで並ぶ

8/26(水・現地)にエヌビディアのFY2027 Q2決算(7/27締め)と7月の米PCE物価指数、8/27〜29にジャクソンホール経済シンポジウムが並ぶ。ウォーシュFRB議長にとっては就任後はじめての基調講演(8/28)で、今年のテーマは「資金決済分野における金融イノベーションとその政策的含意」。NVDAの市場予想売上は930〜950億ドル(会社ガイダンス910億ドル±2%)、非GAAP粗利益率75.0%±50bp。

今日の日本株の値動きの多くは、これらを前にポジションを落とす動きで説明できる。アドバンテストとソフトバンクGの2銘柄で563円分を押し下げ、売買代金は7兆636億円まで細った。買い手が引いた相場は、材料が出るまで方向を出しにくい。

見るべきはNVDAのデータセンター売上とcapexコメント(JST 8/27未明)、7月PCEコア前年比、ウォーシュ議長がフォワードガイダンスに踏み込むか、そして日経VI 28.13がイベント通過後に低下するかどうか。

主要指数

指数 前日比 52週位置 時点
日経平均 65,528.09 -0.74% 78% 8/24終値
TOPIX連動ETF 424.70 +0.14% 97% 8/24終値
S&P500 7,647.17 -0.35% 90% 8/24ザラ場22:46JST
NASDAQ総合 25,939.37 -0.92% 82% 8/24ザラ場22:46JST
SOX 11,361.05 -3.23% 64% 8/24ザラ場22:46JST
VIX 15.84 +4.69% 13% 8/24ザラ場
日経VI 28.13 -0.88% 8/24終値
USD/JPY 159.11 +0.14% 73% 08/20→08/24
BTC 78,197.27 +0.57% 30% 08/23→08/24

セクターは日本の上位がサービス業+2.11%、建設業+1.34%、その他製品+1.25%と内需。米国は生活必需品+1.33%・金融+1.23%・素材+1.20%が上位で、情報技術-2.02%が最下位。日米ともハイテクから離れてバリューに逃げる形が出ている。

前回シナリオの答え合わせ

PARTIAL 8/23作成・8/24向け「上値の重い様子見、バリュー優位の継続。想定レンジ65,400〜66,600円」

日経平均は65,528.09円(-488.27円・-0.74%)で想定レンジ内に着地した。「上値の重い展開・様子見」は当たりで、東証プライム売買代金は8/21の7兆9,134億円から7兆636億円へ10.7%縮小。バリュー優位も継続し、日経平均-0.74%に対しTOPIX連動ETF+0.14%、33業種のうち20業種が上昇した。リスクシナリオに挙げた「8/21に買い戻された半導体が再び売られる」も、アドバンテスト-3.90%・キオクシアHD-6.24%で実現している。

外したのは2点。1つは寄り付きの方向で、ADRの東証終値比乖離が10銘柄すべてプラス(+0.4〜+1.7pt)だったことを根拠に「買い先行で寄る」としたが、実際は37円安で始まった。ADR乖離による寄り付き予想はこれで2回連続の外れで、乖離幅が±1pt程度では方向の予測力がないと判断し、今後は±3pt以上の場合のみ根拠に使う。もう1つが最大の見落としで、強気シナリオに「SKハイニックス・サムスンが株主還元計画への期待で続伸」と書いたが、8/23発表のサムスンの還元計画に自社株消却の言及がなく失望を招き、そこからメモリ株が日米韓で連鎖安となった。日付が決まっている予定イベントを強気材料の根拠にするなら、期待に届かなかった場合の逆方向を必ず併記する──これが今回の教訓だ。なお前回の反省点「日本の半導体株を語る前に韓国メモリ2社の当日の動きを確認する」は今回機能し、キオクシアHDの下落原因の特定につながった。

累計の検証は12件、hit 6・partial 4・miss 2、的中率66.7%(8/24時点)。

今日のシナリオ

8/25の東京向け。NVDA決算まであと2営業日、値がさ半導体の重しを内需・バリューが吸収する二極化がもう1日続くと見ている。夜間先物は65,510円で、日経先物は現物比-18円とギャップは小さい。

メイン: イベント前の様子見、二極化の継続50%
65,000〜66,300円

米NASDAQ-0.92%・SOX-3.16%(ザラ場値)を引き継ぐなら小安いスタートだが、ADR乖離は±0.5pt以内で強い方向性は出ていない。最初の関門は25日線65,561円で、今日の終値はここを33円下回った位置にある。前場で回復できるかが方向を決め、同時刻に始まる韓国市場でサムスン・SKハイニックスが反発するかを合わせて確認する。後場はNVDA決算を翌々日未明に控えて手仕舞いが出やすく、売買代金が7兆636億円をさらに下回るなら上値追いは期待しにくい。

強気: メモリの反動で移動平均を順に回復20%
66,300〜67,000円

米8/24セッションが引けにかけてSOXの下げ幅を縮め、韓国でサムスンの-9%に対する押し目買いが入る場合。キオクシアHDが5日-17.64%の反動を取りに行き、日経平均が25日線65,561円・75日線66,277円を順に回復できれば、このシナリオに移る。

リスク: 関税インフレで米金利が戻し、8/19安値を割る30%
64,300〜65,000円

米10年債4.71%が関税インフレ懸念で4.8%方向へ戻し、SOXが引けにかけて-3%台のまま終わる場合。8/19の終値安値65,326.42円を明確に割り込むと、このレンジを想定する。

無効化条件: 新規材料がないのに終値で66,300円を超える、または64,300円を下回る。あるいは日経平均とTOPIXの騰落率差が今日と逆転し、値がさ半導体が指数を押し上げる形で上昇する。二極化の前提が崩れたときは読みを組み直す。

観測点は、サムスン電子・SKハイニックスの8/25の寄り付き方向、米8/24確定値でのSOX指数の着地、25日線65,561円・75日線66,277円の攻防、8/19終値安値65,326.42円、米10年債4.71%が4.8%へ戻すか4.6%へ低下するか、東証プライム売買代金が7兆636億円から増えるか細るか、金4,735ドルとBTC 78,197ドルの同時高が続くか、対イラン制裁の内容が第三国を含むか。

注目カレンダー

  • ★ 8/26 — 米7月PCE物価指数。FRBが最も重視するインフレ指標で、関税の影響が出る前の数字
  • ★ 8/26 現地引け後(JST 8/27未明) — NVIDIA決算。売上予想930〜950億ドル、焦点はデータセンター売上とcapexコメント
  • ★ 8/27 — ジャクソンホール経済シンポジウム開幕(〜8/29)。8/28にウォーシュFRB議長の就任後初の基調講演。同日16:00に投資部門別売買動向(8/17〜21週)も