/ 9/5 休日版(次の取引日 9/7(月) 向け)

雇用統計3倍上振れ、それでも半導体は逆行高

米8月雇用統計は予想の3倍という上振れで、9月FOMCの利上げ確率は一晩で約49%から約60%へ戻った。米株は反落したのに、SOX指数だけが+3.37%と逆を向いている。

データ時点: 日本株=9/4大引け/米国株・SOX・セクターETF・商品・暗号資産=9/4終値/為替=9/4終値/需給=8/24〜8/28週/空売り比率=9/4/PER=9/4時点/東証33業種=9/4 15:57(フィスコ)

主要指数の5日推移(起点日比)
日経平均S&P500SOX指数
Source: Yahoo Finance / 08/24〜09/04 終値・起点日比NOX MARKET LAB

金利で説明できない動きが1つだけ残った日だった。米8月の非農業部門雇用者数は+16.2万人で、市場予想の+5.3万人を3倍上回った。9月FOMCの利上げ確率はCME FedWatchで約49%から約60%へ戻り、米2年債利回りは4.39%と2025年1月以来の高さまで上がっている。

普通なら高PER株が最初に売られる場面で、米3指数は揃って下げた。ところがSOX指数は11,735.26(+3.37%)と大幅高で、サンディスク+11.90%、マイクロン+6.10%、ウエスタンデジタル+5.86%とメモリ勢が突出した。金利という一本の物差しで11セクター中8つの下げは説明できるのに、半導体だけがその外側にある——この非対称が、9/7(月)の東京を読むうえで最大の手がかりになる。

今日の要点

  • 米8月雇用統計は+16.2万人(予想+5.3万人)で、6月・7月分も合計+5.5万人の上方改定。利上げ確率は約49%→約60%へ戻ったが、平均時給の前年比+3.1%は2021年以来の低い伸びで、インフレ再燃の証拠にはならなかった。だから米株の下げも−0.3〜0.5%にとどまった。
  • 米3指数が下げた日にSOX指数だけが+3.37%。ただし24/7 Wall St.は「サンディスクは当日の会社発表なし。値動きはセクターフロー」と明記しており、個社材料ではなく目標株価の連続引き上げと連休前のポジション構築が背景にある。
  • 9/4の日経平均+806.46円(+1.26%)は5営業日ぶりの大幅反発だが、日経225構成銘柄の上昇銘柄比率は38.2%。ソフトバンクG +11.78%が単独で+477円相当を稼いだ集中相場で、上位3銘柄を除くと+0.09%=ほぼ横ばいだった。

ヘッドライン

米8月雇用統計が予想の約3倍。9月FOMCの利上げ確率が一晩で約49%→約60%へ戻った

9/4 21:30 JSTに公表された米8月雇用統計で、非農業部門雇用者数(NFP)は+16.2万人となった。CNBC集計の市場予想+5.3万人に対して3倍の上振れで、さらに6月分が+2.0万→+3.1万人、7月分が−2.3万→+2.1万人へ改定され、過去2カ月で合計+5.5万人の上方修正がついた。失業率は4.1%で予想どおり横ばい、平均時給は前月比+0.3%・前年比+3.1%だった。

経路は「雇用が強い→消費が続く→インフレが高止まり→FRBが利上げしやすい→短期金利が上がる→株式の割引率が上がる」で、割引率(将来の利益を今の価値に直すときの割り算の分母)が上がるほど高PER株の理論価格は下がる。実際に米2年債利回りは4.39〜4.42%と2025年1月以来の高水準まで上昇し、CME FedWatchの9月利上げ確率は9/3の49.5%から9/4の59.0%へ戻った。それでも米3指数の下げが−0.3〜0.5%にとどまったのは、賃金の前年比+3.1%が2021年以来の低い伸びで、インフレ加速の裏づけにならなかったためだ。

中身を業種別に見ると、増加はレジャー・接客業+6.2万人(うち飲食店・バー+5.9万人)と政府部門+3.5万人が中心で、情報通信は−2.3万人と最大の減少だった。観測点は9/11(金)21:30 JSTの米8月CPIで、タカ派のウォーシュ議長も条件付きハト派のウォラー理事も「CPI次第」で一致している。米2年債4.39%と米10年債4.78%(52週レンジ内位置99%)の上抜けも合わせて見たい。

米株安のなか半導体・メモリだけが逆行高。SOX +3.37%、サンディスク +11.90%

米3指数が下げた9/4に、SOX指数だけが11,735.26(+3.37%)と大幅高になった。サンディスク+11.90%、マイクロン+6.10%、ウエスタンデジタル+5.86%、AMD +4.7%(報道値)とメモリ勢が突出している。ただし24/7 Wall St.は「サンディスクは当日の会社発表なし。値動きはセクターフロー」と明記しており、会社発の新規材料は出ていない。

背景にあるのは目標株価の連続引き上げ(BofAがサンディスクを2,100→2,500ドル、別社が1,700→3,000ドル、Lynxがマイクロンに1,325ドル)と、金利上昇局面でのローテーション、そして連休前のポジション構築だ。9/3は逆に「AI半導体が売られ、AIソフト・サーバーが買われる」動きだったので、主導権が1日で半導体側へ戻ったことになる。金利が上がる日にメモリが買われるのは、マクロ(金利)ではなくミクロ(HBM需給・NAND価格)で説明できる材料が別に立っているためと読める。

もっとも、持続性には留保がつく。TrendForceによれば26年3Qの契約価格はDRAM +13〜18%・NAND +10〜15%で、前四半期の+58〜63%から大幅に鈍化している。観測点はSOXの52週レンジ内位置67%が示す戻り余地と、キオクシアHD(9/4終値54,460円、20日高値63,350円まで+16%)の9/7寄り値、そして9/10 14:30 JSTのTSMC月次売上高になる。

日経平均806円高はソフトバンクG一極。上昇銘柄比率は38.2%だった

9/4の日経平均は65,020.94円(+806.46円・+1.26%)で5営業日ぶりの大幅反発。だが同じ日のTOPIXは4,103.23(+0.03%)でほぼ横ばいで、日経225構成銘柄の上昇銘柄比率は38.2%(値上がり86/値下がり137/変わらず2)と過半数が下落した。ソフトバンクG +11.78%(アーム株高とOpenAIの新モデル提供発表が材料)が単独で寄与度+0.743pt≒+477円分を稼いでいる。

NT倍率(日経平均÷TOPIX)は15.65から15.85へ0.20ポイント拡大した。上位3銘柄(ソフトバンクG・アドバンテスト・ファーストリテイリング)を除いた指数の動きは+0.09%で、幅広い銘柄はほとんど上がっていない。値がさ数銘柄に資金が集中する形は、主役が崩れた日の下げ幅も大きくなるという裏返しを抱える。

なお東証プライム全体で見ると値上がり50.6%・値下がり45.7%と拮抗しており、下げていたのは主に大型株だった。売買代金は8兆3,282億円(9/3は7兆5,770億円)と約1割増え、空売り比率は39.9%(−3.6pt)と40%を割っている。株高と空売り比率の低下が同時に起きたのは買い戻しが一巡した形で、ここから上には新規の買いが要るということでもある。

主要指数

主要指数の前日比
Source: fetch_market.py(Yahoo Finance)/日本株=9/4大引けNOX MARKET LAB
VIXの推移
VIX
Source: Yahoo Finance(fetch_history.py)NOX MARKET LAB
投資部門別売買動向(週次ネット・億円)
海外投資家個人信託銀行事業法人
Source: JPX 投資部門別売買状況(fetch_investor_flows.py)/公表は対象週の翌週木曜NOX MARKET LAB
月ごとの上昇銘柄割合(日経225構成銘柄・月末終値ベース)
Source: Yahoo Finance/日経公式の構成銘柄(fetch_breadth.py)/2026-09-04時点NOX MARKET LAB
出遅れ組と先行組の相対パフォーマンス(2026-06-30 起点)
出遅れ組(過去1年 下位20%)先行組(上位20%)
Source: Yahoo Finance(fetch_breadth.py)/等金額・起点日比NOX MARKET LAB
指数 前日比 52週位置 時点
日経平均 65,020.94 +1.26% 75% 9/4大引け
TOPIX 4,103.23 +0.03% 9/4大引け
NYダウ 53,414.25 −0.51% 90% 9/4終値
S&P500 7,718.60 −0.38% 94% 9/4終値
NASDAQ総合 26,506.99 −0.29% 91% 9/4終値
SOX指数 11,735.26 +3.37% 67% 9/4終値
VIX 14.53 +1.47% 6% 9/4終値
ドル円 156.22 +0.36% 56% 9/4終値

日経平均は5日線65,217.67円に0.3%届かず、25日線66,067.78円・75日線66,735.27円はまだ上にある。RSI(14)は45.3で中立、20日安値は9/3の64,214.48円。PERは17.23倍で、直近40営業日のレンジ内位置は26%と割安側に振れている。予想EPSが3,735.57円から3,773.71円へ切り上がったため、株価が+1.26%上げてもPERは+0.04倍しか上がっていない。

セクターと為替

為替・暗号資産の前日比
Source: fetch_market.py(Yahoo Finance)/日本株=9/4大引けNOX MARKET LAB
米セクターETFの前日比(強い順・弱い順)
Source: fetch_market.py(Yahoo Finance)/日本株=9/4大引けNOX MARKET LAB

米国は11セクター中8つがマイナスの「広く薄く売られた日」で、プラスはテクノロジー+0.70%、資本財+0.41%、公益+0.12%の3つだけだった。下位は一般消費財−1.33%、通信サービス−1.19%、ヘルスケア−1.04%。グロース側(XLK・XLY の平均−0.32%)とディフェンシブ側(XLU・XLP の平均−0.34%)の差は0.02ポイントしかなく、ローテーションの向きは判定不能に近い。そのなかで半導体だけが+3.37%と独立して強い、というのが9/4の米国市場の要約になる。

東京の33業種は情報・通信業+3.55%(ソフトバンクGがほぼ単独で作った数字)、証券・商品先物取引業+2.12%、非鉄金属+1.61%が上位で、下位は鉱業−2.83%、海運業−2.38%、電気・ガス業−2.35%だった。電気・ガスは9/3の上位から1日で入れ替わっており、円高メリットという物色テーマが1日で剥落したことになる。海運・鉱業の下げはイラン緊張の巻き戻しで、原油関連はニュース1本で往復している。

為替はドル円156.22円(+0.36%)で、NY市場では高値156.75円・安値155.34円。日本の新発10年物国債利回りは2.890%(一時2.895%)と8/27以来の低水準で、9/1に3.0%=1996年9月以来30年ぶりの高さを付けた水準から約11bp下がった。9/2の1,889円安は「日本10年債3%乗せ→割引率上昇→全面安」が経路だったので、その2つの重石が同時に軽くなったことが9/4の反発の土台になっている。ただし9/17〜18の日銀会合が控えており、50bp利上げ観測が再燃すれば円高・金利上昇はいつでも戻る。暗号資産はビットコイン79,689.35ドル(−1.95%)、イーサリアム−2.14%、ソラナ−1.98%と揃って反落した。

前回シナリオの答え合わせ

シナリオ的中率の推移(hit=1, partial=0.5)
累計的中率
Source: scenario_log.jsonNOX MARKET LAB

PARTIAL

9/4向けのシナリオは partial 判定になった。日経平均の終値65,020.94円は想定レンジ64,400〜65,300円の中に収まり、「シカゴ先物+330円のギャップに追随買いが入って寄り高で始まる」も「5日線65,494.59円の手前で伸び悩む」も実現している。終値は5日線に0.7%届かず、日中高値でも届かなかった。トリガーに置いたドル円も155.5〜156.5円の膠着(終値156.22円・+0.36%)で想定どおりだった。

外したのは値幅と物色の2点だ。「小幅高で引ける」としたが実際は+806円・+1.26%で小幅ではない。最大の誤りは「TOPIX優位・日経足踏み(NT倍率15.65)が続く」という見立てで、実際はTOPIX +0.03%に対し日経+1.26%、NT倍率は15.85へ拡大と完全に逆だった。中身も「円高メリットの内需・小売・電力ガスと日銀利上げの金融が優位」としたが、買われたのは情報・通信・証券・非鉄で、電気・ガスはむしろ下落業種に回っている。

見落としの本体は、指数の「方向」「値幅」「広がり」を分けて書いていなかったことにある。9/4は上昇銘柄比率38.2%で過半数が下落しており、+806円のうちソフトバンクG単独で+477円相当、上位3銘柄を除くと+0.09%だった。「指数は大きく上がるが広がりはない」という第3の形を想定に持っていなかったことが、値幅と物色を同時に外した原因になる。今回のシナリオからは、広がりの想定(上昇銘柄比率のレンジ)を明記することにした。

累計成績は検証19件・的中率68.4%(hit 9 / partial 8 / miss 2)。

今日のシナリオ(9/7向け)

今日のシナリオ(日経平均のレンジと確率)
Source: fetch_market.py(Yahoo Finance)/日本株=9/4大引けNOX MARKET LAB
メイン: ギャップアップして半導体主導で高値圏を保つが、米国休場の薄商いで25日線には届かない45%
65,400〜66,200円

日経225先物の大取ナイトセッションは65,830円(大取日中終値比+810円、9/5 06:00時点)で、寄りは65,700〜65,900円を想定する。9/4に届かなかった5日線65,217.67円が支持に変わり、キオクシアHD・アドバンテスト・東京エレクトロン・イビデンなど半導体が主導役になる形を本線とみる。根拠はSOX +3.37%、ADR乖離が東京エレクトロン+2.6pt・アドバンテスト+1.3ptとプラスであること、日本10年債の2.890%への低下、そして空売り比率39.9%=踏み上げ燃料は乏しいこと。上値を抑えるのは米10年債4.78%・2年債4.39%という金利水準、ソフトバンクGの利益確定売り(ADR乖離−3.8pt)、そして米国勢不在の商い薄になる。広がりの想定は上昇銘柄比率50〜65%。終値で9/4終値65,020.94円を下回るか、66,200円を超えれば、この読みは外れと判断する。

強気: メモリ相場の再点火で25日線を上抜け30%
66,200〜67,000円

キオクシアHDが寄りから+5%以上で始まり前場を通じて高値を切り上げる、韓国のSKハイニックス・サムスン電子が米メモリ高に追随する、東証プライム売買代金が7兆円台を維持する、ドル円が157円台を回復する——このあたりがトリガーになる。25日線66,067.78円を明確に上抜ければ、次の節目は75日線66,735.27円。

リスク: 4営業日連続の寄り天。ギャップを埋めに行く25%
64,600〜65,400円

ソフトバンクGに利益確定売りが集中して9/4に稼いだ+477円分が剥がれる場合(ADR乖離−3.8ptが先行シグナル)、米金利上昇を東京が改めて嫌気して高PERのAI・半導体が朝の高値から失速する場合、ドル円155円割れの円高再燃または日銀50bp利上げを裏づける報道が出た場合。下値の目処は9/3の20日安値64,214.48円。

時間帯別には、前場は半導体・メモリが主導役で、最初の関門が5日線65,217.67円、次が25日線66,067.78円。後場は米国がレイバーデーで休場のため商いが細り、値幅が縮小しやすい。9/3は後場中盤に韓国KOSPIの軟化に連れて崩れた前例があるので、アジア株も観測項目に入れておく。東証プライム売買代金が5兆円台まで細るなら、値動きの幅は薄商いの分を割り引いて読みたい。

なお9/5時点でkabuステーションは停止中で、寄り前気配・東証33業種の当日騰落率・確定出来高は取得できていない。先物の値は二次情報のため、寄り前に大取の値で検算する前提で置いている。

注目カレンダー

  • ★ 9/7(月)終日: 米国休場(レイバーデー) — NYSE・NASDAQ・米債券市場とも終日休場。東京は通常取引で、引け後に米国発の材料が出ない1日になる
  • ★ 9/8(火)08:50: 日本 4-6月期実質GDP改定値・7月国際収支 — 9/17〜18の日銀会合を前にした国内材料
  • ★ 9/11(金): メジャーSQ + 米8月CPI(21:30 JST) — 今後2週間で最も荒れやすい日。利上げ確率が4営業日で66%→49%→60%と往復した市場の迷いは、ここで一度決着する