/ 9/8夕刊版(大引け後)
日経1,130円安、後場に1,500円崩れた理由
9/8の日経平均は前場に+392円まで買われながら、後場13:45から崩れて−1,130.51円の安値引けになった。円高・半導体の利確・支えのないAI1本足・原油高という4つが同じ日に重なった一日を、順番に整理する。
データ時点: 日本株=9/8大引け(kabuS確定値)/米国株・SOX・米セクターETF・米10年債=9/4終値(9/7は米休場)/為替・商品=9/8 18時頃/暗号資産=9/8/需給=8/24〜28週/空売り比率=9/8/PER=9/7(9/8は自前計算)/東証33業種=9/8大引け(kabuS)
上げていた相場が、材料を4つ抱えたまま後場に崩れた日だった。9/8の日経平均は65,269.33円(−1,130.51円・−1.70%)。始値は65,844円で、10時頃には66,792円まで買われて前日比+392円のプラス圏にいたのに、引けたのはその日の安値そのままの水準だった。高値からは1,500円あまりを落としたことになる。
崩れ方には順番がある。まず前場に円が一時152円88銭まで急伸して輸出株が売られ、次に後場13:45から半導体・値がさに利益確定が出て66,700〜66,800円の壁に2日続けて跳ね返され、その売りを受け止める買いがソフトバンクG1銘柄しかなく上昇比率28.7%の全面安になり、さらに夕方にはフーシ派によるサウジ攻撃の声明でWTIが94.57ドルまで上がった。以下、この順で見ていく。
今日の要点
- 円高が起点になった。9/7夕方の156.1円から154.4円へ振れたドル円は、9/8前場11:20に152.88円まで進んだ。日銀9月会合での利上げ観測はOISで約8割まで織り込まれており、33業種は上昇9・下落24で、輸送用機器−4.14%・電気機器−3.90%・機械−3.65%・精密−3.64%と円高に弱い業種がそのまま下位に並んだ。
- 下げ幅を作ったのは後場だ。10時の高値66,792円から13:45までは66,400〜66,600円で保っていたが、そこから引けにかけて65,269円まで崩れた。寄与度マイナスは東エレク−185.04円・アドバンテスト−164.12円・TDK−103.33円・イビデン−93.19円・キオクシアHD−49.75円・村田製作所−48.03円の6銘柄だけで約−640円になる。
- 買い手の裾野がなかった。プライムは値上がり430に対して値下がり1,070で上昇比率28.7%、プラス寄与はソフトバンクG+272.74円・ニトリHD+14.75円・KDDI+11.87円の3銘柄しか目立たない。売買代金8兆4,774億円のうち7,265億円(8.6%)をソフトバンクG1銘柄が占め、空売り比率は42.4%(前回39.9%)、日経VIは32.05(+46.61%)に跳ねた。
ヘッドライン
円が一時152円88銭まで急伸、輸出株が全面安になった
ドル円は9/7の夕方に156.1円から154.4円へ動き、9/8の前場11:20に152.88円を付けた。9/8 18時頃の水準は154.10円(−1.34%)だが、この前日比は9/7の足が欠損しているため9/6からの2日分にあたる。背景として挙がっているのは日銀の9月利上げ観測(OISで約8割)、ベッセント発言、そして円キャリーの巻き戻しで、日本10年債利回りは2.885%(−0.045、9/8 15:10)だった。
円高がまず効くのは輸出セクターだ。輸送用機器−4.14%、電気機器−3.90%、機械−3.65%、精密−3.64%と、円高の影響を受けやすい業種が下位に固まった。経路としては、円高→輸出企業の想定レート150〜155円に接近→業績の下方修正の連想、という順で、高PERの電子部品から先に売られる形になる。加えて9/7は米国がレイバーデーで休場だったため海外勢の買いが不在で、売りだけが通りやすい地合いでもあった。
ドル円のテクニカルは、5日線157.01円・25日線158.59円・75日線160.41円・200日線158.44円をいずれも大きく下回り、RSI(14)は25.4、20日安値は152.88円で当日安値と同値。ボリンジャーの−3σ 154.14円も下抜けている。152円台に定着するのか155円台へ戻すのかが、輸出株の重さがそのまま残るかどうかの分かれ目になりやすい。9/18には日銀総裁会見が控える。
後場13:45から1,500円、66,700〜66,800円の壁と半導体の利確
10時に付けた高値66,792円から13:45までは66,400〜66,600円のレンジで、日経平均はまだプラス圏を保っていた。崩れたのはそこからで、15:30にかけて65,269円まで1,500円ほど下げ、安値引けになった。ここで重要なのは、円は13時以降むしろ小幅に戻していたことだ。つまり後場の下げは為替の新しい動きが引き金ではない。
引き金として整理できるのは2つある。ひとつは水準で、66,700〜66,800円は13週線と75日線(75日線66,824円)が重なる帯にあたり、2日続けてここで跳ね返された。もうひとつは中身で、9/4のSOX指数+3.37%を9/7の東京が一括で織り込んだ後だったため、装置株には利益確定の理由があった。東エレク−185.04円、アドバンテスト−164.12円、TDK−103.33円、イビデン−93.19円、キオクシアHD−49.75円、村田製作所−48.03円で寄与は約−640円。9/11のメジャーSQを控えた先物の調整も同じ時間帯に重なっている。
上値の目安は66,700〜66,800円を出来高を伴って抜けられるかどうか、下値は5日線65,046円、その先は9/3安値64,214円とボリンジャー−2σ 63,727円。終値65,269.33円は一目均衡表の雲下限65,271円をわずかに下回った位置にあり、ここを回復できるかは翌日以降の見どころになる。
支えたのはソフトバンクG1銘柄、上昇比率28.7%の「AI1本足」
その後場の売りに対して、受け皿になった銘柄がほとんどなかった。ソフトバンクGは+5.45%の6,556円と3連騰で約2カ月ぶりの高値を付け、出来高は20日平均比2.89倍、売買代金は7,265億円でプライム全体の8.6%、指数への寄与は+272.74円。一方でプライムの上昇比率は9/7の41.7%から28.7%へ下がり、値下がりは1,070銘柄に達した。
この形は9/7からの連続だ。9/7も寄与度上位3銘柄を除いた指数の上昇率は+0.42%にとどまっており、指数は1〜3銘柄で動き、裾野は売られている状態が続いている。AIというテーマに資金がソフトバンクGへ集中する裏側で、裾野の買いが細っているため、主役に利益確定が出た日には受け皿がない。9/8はその主役が上げていたにもかかわらず全面安になった日で、集中の度合いがむしろ強まったと読める。
水準としては20日高値6,745円と、下値では6,000円の節目が意識されやすい。RSI(14)は72.9、ボリンジャー+2σ 6,277円を上回って引けている。指数の広がりの側では、プライムの上昇比率が50%を超える日が出てくるかどうかが、「1本足」から抜けたかどうかの分かりやすい物差しになる。日程では9/29のOpenAI開発者会議が控える。
4つめの逆風、原油94.57ドル
夕方にはフーシ派が、サウジアラムコのジザン製油所とヤンブーの施設、および空軍基地への攻撃を声明した。米・イランの攻撃は休止中とされる一方でホルムズ海峡の通航制限は続いており、紅海側のヤンブーはサウジにとって唯一の輸出回廊にあたる。WTIは94.57ドル(+3.38%、対比日9/4)で、1カ月では+21%になる。
これが株式に効く経路は9/2と同じだ。原油高→日本のインフレ再加速→日銀の利上げを正当化→円高と長期金利の上昇、という順で回る。つまり①の円高と同じ根に戻ってくるため、輸出株にとっては円高と原油高の二重の逆風になる。同時に米10年債利回り4.78%(9/4、52週レンジ内位置99%)が下がらない理由でもある。逆に石油・石炭+1.91%、鉱業+1.08%には直接の追い風で、この日プラスだった9業種の一角を占めた。
見るべき水準はWTIの95ドルと100ドル、日本10年債の3.0%への再接近、そして9/11の米8月CPIになる。
主要指数
| 指数 | 値 | 前日比 | 52週位置 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 65,269.33 | −1.70% | 75% | 9/8終値 |
| TOPIX | 4,057.78 | −1.65% | - | 9/8終値(前日比−68.02ptから算出) |
| S&P500 | 7,718.60 | −0.38% | 94% | 9/4終値 |
| NASDAQ総合 | 26,506.99 | −0.29% | 91% | 9/4終値 |
| SOX指数 | 11,735.26 | +3.37% | 67% | 9/4終値 |
| VIX | 15.92 | +4.05% | - | 9/8取得時点 |
| ドル円 | 154.10 | −1.34% | 44% | 9/8 18時頃(安値152.88) |
| ビットコイン | 78,572.03 | −0.69% | 30% | 9/8 |
米国側は9/4が最終セッションで、9/7がレイバーデー休場だったため日本株とは1営業日ぶんの時間差がある。日経VIは32.05(+10.19・+46.61%)で、30超は警戒が本格化する水準とされる。NT倍率は16.09で前日と変わらず、日経平均とTOPIXがほぼ同率で下げたことを示している。
テクニカルは、5日線65,046円が終値のすぐ下、25日線66,210円が上、75日線66,824円がさらに上。RSI(14)は49.7で中立、MACD −256.62はシグナル−172.51を下回る。20日高値69,608.24円・20日安値63,772.80円に対するレンジ内位置は74%、ボリンジャーは−2σ 63,727円・−3σ 62,423円、200日線は59,130円と遠い。PERは9/7時点で17.39倍・予想EPS 3,818.28円、9/8終値ベースの自前計算では17.09倍で、直近38営業日(7/14〜9/7)のレンジ内位置は17%、期間平均17.47倍を下回る位置に落ちた。
相場の中身 — 代金・広がり・需給
プライムの売買代金は8兆4,774億円で、20日平均8兆5,158億円のちょうど1.00倍。5日平均7兆8,958億円は上回るが、60日平均10兆1,123億円には遠く、20日平均割れは6営業日連続になる。売買代金のうち日経225銘柄が82.3%を占め、金額の主役はソフトバンクG1銘柄の7,265億円だった。株安・代金増・上昇比率28.7%が同時に成立している形で、レポートは売り方主導の全面安と整理している。空売り比率が39.9%から42.4%へ上がって40%台に戻ったことも同じ方向を指す。
広がりの指標では、騰落レシオ(25日)が117.41、9月の月次上昇比率は31.6%。6月末を基準にした比較では出遅れ組(下位20%)が+10.94%、先行組(上位20%)が−11.97%で、水面下の逆回転は続いている。需給は8/24〜28週の集計で海外−1,747億円・個人−535億円と同符号、信託銀行−2,003億円で2週連続の売り越し、自己計は+3,043億円。8/31〜9/4週の集計は9/10の公表で、9/8の値動きを説明するデータはまだ出ていない。
セクターは上昇9・下落24。上位が情報・通信+2.20%、石油・石炭+1.91%、鉱業+1.08%、陸運+0.61%、小売+0.37%で、下位はガラス・土石−4.44%、輸送用機器−4.14%、電気機器−3.90%、機械−3.65%、精密−3.64%。米国は9/4時点でテクノロジー+0.70%・資本財+0.41%・公益+0.12%がプラス、一般消費財−1.33%・通信サービス−1.19%・ヘルスケア−1.04%が下位で、ローテーションの判定は中立(米)/リスクオフ(日)になる。商品は銅6.76(+2.47%、52週レンジ内位置100%)、金4,437.50(+0.17%)。暗号資産はビットコイン78,572.03ドル(−0.69%)、イーサリアム2,491.10ドル(+0.01%)、ソラナ103.42ドル(−0.43%)で、Fear&Greedは69(Greed)、BTCドミナンス57.7%だった。
前回シナリオの答え合わせ
MISS
9/8朝版のメインシナリオはレンジ65,700〜66,500円だったが、終値65,269.33円で431円下抜け、しかも安値引けになった。成立したのはリスクシナリオ(25%・64,800〜65,700円)のほうで、その条件に置いた「ドル円153円台入り」は152.88円まで進んだ。当たっていたのは方向(反落)と「円高が上値の重し」という前提の2点だけだ。
見落としは4つある。第一に、9/7夕方の時点で2円動いていた円高が翌日さらに1.2円進む速度を、リスク側25%にしか置かなかった。第二に、下げの主役を「ソフトバンクGとアドバンテストの剥落」と読んだが、ソフトバンクGは寄り前気配−3.2%から終値+5.45%(寄与+272.74円)へ切り返し、実際に売られたのは輸出株全体(輸送用機器−4.14%・電気機器−3.90%)と装置株の利確だった。第三に、上昇銘柄比率を45〜60%と想定したのに実際は28.7%の全面安だった。第四に、後場13:45から1.5時間で1,500円崩れる「後場型の安値引け」という時間帯の形を持っていなかった(朝版では後場は値幅縮小と書いていた)。
累計成績は検証21件・hit 9/partial 9/miss 3で、的中率は64.3%。前回の67.5%から低下した。
今日のシナリオ
安値引けの翌日の自律反発は限定的にとどまり、25日線66,210円には届かない揉み合いを本線とみる。大取ナイトセッションのミニ9月限は65,215円(日中比+25円、現物終値比−54円)と平穏で、CMEの円建ては65,170円(−660円)。寄りは9/8夜の米国次第で±300円の振れ、前場は5日線65,046円の攻防と輸出株の寄り値で「円高の織り込み一巡」かどうかを判定する形になりやすい。後場は9/10のアップルイベント・TSMC月次・ECB・オラクル決算、9/11のSQと米CPIを控えて持ち高を増やしにくい時間帯で、14:30以降に先物の売りが出るかどうかがSQ週らしい観測点になる。
トリガーは、ドル円の155円台回復、9/8夜の米国でSOXが+1.5%超、サンディスク・マイクロンの続伸、キオクシアHDが寄りから+3%超かつ出来高1.5倍超。66,000円がPER 17.29倍にあたり、9/8終値ベースの17.09倍から期間平均17.47倍へ戻る途中の水準になる。ただし上値には66,700〜66,800円の13週線・75日線が残るため、そこを出来高を伴って抜けられない限り上限はレンジ内にとどまりやすい。
トリガーは、ドル円が152円台のまま東京時間を通す、WTIが95ドルを超える、日本10年債が2.95%を超える、米国株が−1%超、ソフトバンクGが−3%超。下値の目処は9/3安値64,214円、20日安値63,772.80円、ボリンジャー−2σ 63,727円の順になる。ソフトバンクGが下げに回った場合、9/8のように1銘柄で+272.74円を稼ぐ支えが外れるため、指数の下げは広がりの数字以上に見えやすい。
観測点は、①ドル円153〜154円台の定着(152円台ならリスク側、155円台なら強気側)②9/8夜の米国=レイバーデー明け初日のSOXとサンディスク・マイクロン③輸出株(トヨタ・村田製作所・TDK)の寄り値が9/8終値を上回るか④5日線65,046円・雲下限65,271円・25日線66,210円⑤WTI 95ドル⑥プライム上昇比率40〜55%⑦売買代金8兆円前後⑧14:30以降の先物の売り、の8点。無効化条件は、終値で66,000円を超える場合(円高が止まり輸出株に買い戻しが入ったと判断する)、または64,800円を割る場合(円高・原油高が主役のまま9/3安値を試す動きに変わったと判断する)。
注目カレンダー
- ★ 9/8(火)22:30: 米国市場のレイバーデー明け初日 — 9/4のSOX +3.37%に続きがあるかを最初に確かめる場になる。東京は9/7にこの分を一括で織り込んでいるため、続伸がなければ半導体の利確が続きやすい
- ★ 9/10(木): 02:00 アップル新製品イベント(折り畳みiPhone)/14:30 TSMC 8月売上高/21:15 ECB理事会(25bp利上げ予想80〜87%)/引け後にオラクル・アドビ決算とJPX投資部門別(8/31〜9/4週) — 半導体の需要を月次の実数で確かめる日で、需給データも同日に更新される
- ★ 9/11(金)09:00/21:30: 日本メジャーSQ(9月限)+ 米8月CPI — 9/15〜16のFOMC、9/17〜18の日銀会合を前にした最後の大きな材料が同じ日に並ぶ