/ 9/10夕刊版(大引け後)
TSMC月次+53.3%で後場に半導体急伸、日経は高値引けで3日ぶり反発
日経平均は128.17円高の65,270.95円で3日ぶり反発、しかも高値引け。寄りは374円安だったが、後場終盤に伝わったTSMCの8月月次売上(前年比+53.3%の過去最高)が半導体を押し上げた。
データ時点: 日本株=9/10大引け(確定値)/米国株・SOX・米セクターETF・米10年債・VIX=9/9終値(米国9/10セッションは未開始)/為替・商品・暗号資産=9/10 17:30頃/東証33業種・売買代金ランキング=kabuS 9/10 17:32時点/PER・EPS=9/9時点
朝に立てた前提が、一日の中で書き換わった日だった。9/10の日経平均は64,768.53円(−374円)で寄り、10:36に64,186.68円まで下げてから切り返し、終値65,270.95円(+128.17円・+0.20%)と高値引けで3日ぶりに反発している。日中値幅は1.66%あった。
流れを変えた材料は2つある。10:30の日銀・増審議委員の利上げ発言で証券・銀行・保険が買われて下値が止まり、14:30のTSMC 8月月次売上が過去最高だったことで後場終盤に半導体が急伸した。米国は9/9まで3営業日続落しており、9/10のセッションはこの記事の時点でまだ始まっていない。
今日の要点
- 指数を押し上げたのは実質1銘柄だった。アドバンテストの日経平均への寄与は単独で+260.67円で、指数全体の上げ幅+128.17円を上回る。TSMC月次という「出荷済みの実額」が、9/3のブロードコム決算後に広がったAI投資の減速観測に対する反証として効いた形になる。
- 日銀の利上げ観測が、今日は円高の逆風より金融株の追い風として出た。増審議委員が「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、東証33業種は証券・商品先物+2.45%、サービス+2.14%、銀行+1.95%、保険+1.20%が上位を占めている。次回会合は9/17〜18。
- 資金が増えたのではなく、業種の間を移動しただけだった。上昇比率は48.0%(値上がり723/値下がり784)で4営業日連続の50%割れ、売買代金は8兆3,804億円で20日平均8兆4,695億円に対し0.99倍にとどまる。前日首位の非鉄金属は+6.88%から−3.63%へ反転して33業種最下位に沈んだ。
ヘッドライン
TSMCの8月売上高が前年比+53.3%の過去最高、後場終盤に半導体が急伸
TSMCの8月連結売上高は5,148億600万台湾ドル(約163億米ドル)で、前年同月比+53.3%・前月比+10.1%と月次として過去最高になった。1〜8月累計は3兆3,868億台湾ドルで前年同期比+39.3%。発表が東京の後場終盤にあたり、アドバンテスト+3.29%、レーザーテック+2.94%、キオクシアHD+1.91%が上げ幅を広げた。
月次売上は受注でも見通しでもなく、実際に出荷した金額である点が重要になる。9/3のブロードコム決算のあとに広がった「AI投資の受け皿がチップから電力やソフトへ移ったのではないか」という疑いに対して、実データで反証した形になった。波及の順序は、TSMCの月次から前工程・後工程の稼働率、そしてテスタや装置の受注、メモリの稼働へと降りていく。
確認したい水準ははっきりしている。アドバンテスト33,920円が9/11も続伸するか、9/9終値11,931.32のSOXが9/10の米国市場で3日続伸するか、キオクシアHDの出来高が20日平均比1.5倍(約5,500万株)に届くかの3点だ。
日銀・増審議委員の「引き続き利上げを」で証券・銀行・保険が業種上位
増一行審議委員は10:30の福井市の金融経済懇談会で、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、基調的な物価上昇率が2%にかなり近づいていると指摘した。市場では次回9/17〜18の会合での1.25%への引き上げが本線とみられている。東証33業種は証券・商品先物+2.45%、サービス+2.14%、銀行+1.95%、保険+1.20%が並んだ。
利上げ観測は2つの経路で株価に届き、符号が逆になる。為替経路では円高が輸出企業の想定為替レート(150〜155円)割れにつながり下方修正の連想を呼ぶが、金利経路では預貸利ざやの改善が銀行・保険に、売買回転の上昇が証券に効く。9/10は後者が前者を上回り、寄り374円安からの下げ止まりを作った。
次の判定材料は9/17〜18の日銀会合の幅(25bpか50bpか)、9/9時点で2.880%の日本10年債利回りが3.0%を再び試すかどうか、そしてドル円153.59円と20日安値152.90円との距離になる。証券・銀行・保険が9/11も業種上位に残るかも確認点だ。
中東緊迫と米金利高で寄り374円安、ブレント101ドル・米10年債4.84%
9/9の米国市場はNYダウ−0.77%、S&P500 −0.48%、NASDAQ総合−0.64%と3指数そろって3営業日続落した。米軍のイランのタンカー攻撃でブレント原油が101ドル台に乗せ、米10年債利回りは4.84%と52週レンジ内位置100%へ上昇している。ベッセント財務長官が発表した国債バイバックの3倍増(上限60億ドル)が市場予想の70〜100億ドルに届かなかったことも、長期債の売りを誘った。
東京への波及は2経路あった。原油高がインフレ期待を通じて長期金利を押し上げ、高PER株の割高感につながる経路に加えて、原油・ナフサ高が資材コストとして建設や機械を直撃する経路である。建設は−2.33%、機械は−1.32%で、清水建設−5.60%・大成建設−5.58%が目立った。
見ておきたいのはWTI 96.55ドル(9/10 17:30時点・時間外を含む直近値。9/9のNYMEX 10月限の公式清算値は96.05ドル)とブレントの105ドル接近、米10年債の4.84%から5.0%までの0.16pt、そして9/10安値64,186.68円と9/3終値64,214円の重なりだ。銅6.84ドルとエネルギーETFも52週レンジ内位置100%にある。
主要指数
| 指数 | 値 | 前日比 | 52週位置 | 時点 |
|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 65,270.95 | +0.20% | 75% | 9/10終値(高値引け) |
| TOPIX | 4,054.58 | +0.20% | - | 9/10終値 |
| S&P500 | 7,636.36 | −0.48% | 89% | 9/9終値 |
| NASDAQ総合 | 26,253.34 | −0.64% | 87% | 9/9終値 |
| SOX | 11,931.32 | +0.37% | 69% | 9/9終値 |
| VIX | 16.46 | +4.71% | 17% | 9/9終値 |
| ドル円 | 153.59 | +0.07% | 41% | 9/10 17:30頃 |
| ビットコイン | 78,078.18 | −0.23% | 29% | 9/10 17:30頃 |
需給の数字も同じ日に出ている。16:00公表のJPX投資部門別売買動向(08/31〜09/04分)では海外投資家が+7,288億円の買い越しに転換し、2週連続の売り越しが途切れた。この週は9/2に日経平均が1,889円安となった週にあたり、海外勢がその急落を拾った計算になる。一方で信託銀行は−4,427億円で4週連続の売り越し、投資信託−2,981億円、金融機関合計でも売り越しが続いており、海外勢の買いが止まると支え手が薄いという構図は変わっていない。空売り比率は42.4%(前日比−1.8pt)に低下した。
前回シナリオの答え合わせ
MISS
9/10朝版のメイン(50%)は「大幅安で寄ったあと寄り安が一日の安値に近くなる下げ渋り。ただし戻り切れない」で、想定レンジは63,900〜64,900円だった。実際の終値65,270.95円はレンジを381円上抜け、無効化条件に置いた「終値で5日線65,208円を超える」に触れたためミスと判定した。広がりも想定25〜40%に対して実際は48.0%と上振れしている。
当たっていた部分もある。寄り64,768.53円のあと10:36の安値64,186.68円が一日の底になるという日中の形と、その安値が9/3終値64,214円をわずかに割ったところで止まった点は想定どおりだった。
外した原因は3つに整理できる。1つ目は14:30のTSMC 8月月次売上を「強気シナリオのトリガー」に置いたことで、実際の+53.3%という数字はトリガーどころかメインシナリオの前提そのものを壊した。月次の実需データは、サブ材料ではなく方向のスイッチとして扱うべきだったことになる。
2つ目は日銀・増審議委員の講演をリスク側(タカ派なら円高で下押し)としてのみ想定し、金融株の買い材料になる面を書かなかった点だ。利上げ観測は円高という輸出への逆風と、金利上昇という金融への追い風の両面を持つ。3つ目は前日の主役だった非鉄金属について、逆行継続のほうを本線に据えたことで、実際には−3.63%で最下位に沈む「1日天井」のパターンだった。累計は2026-09-10時点で検証23件・hit 9/partial 10/miss 4、的中率60.9%(前日の63.6%から低下)。
今日のシナリオ
SQ算出値を挟んで寄りは振れやすいが、日中は方向感が出にくい。上値の支えはTSMC月次の余韻で半導体が買われやすいこと、下値の支えは日銀9月利上げ観測で証券・銀行・保険に資金が残ることで、重しは今夜の米PPIと明日の米CPIの2連発、米10年債4.84%、ブレント101ドル台の高止まり、そしてSQ通過で先物経由の下支えが外れることだ。判定ラインは5日線65,421円で、上の抵抗は25日線66,218円、下は9/10安値64,186.68円になる。
トリガーは米8月PPIが予想(前年比+5.3%)を下回ること、9/10夜のSOXが+1.5%超で引けること、オラクルとアドビの決算がAI受注残で上振れること、SQ値が現物終値65,270.95円を上回って決まること、ドル円の154円台回復。終値で66,600円を超えた場合は「上値が重い」という前提自体が誤りだったことになる。
トリガーはPPIが前年比+5.5%超で米10年債が4.95%以上に乗ること、ブレントの105ドル接近、SQ算出後の先物売り加速で前場に64,800円割れとなること、ドル円の152.90円割れ、上昇比率が寄りから35%割れとなること。終値で64,000円を割れると揉み合いではなく下値模索に切り替わり、20日安値63,772.80円が次の目安になる。
なお9/11のSQ算出は9:00〜9:15で、この時間帯の値動きは相場観ではなく建玉の事務で決まるため方向の根拠にはしない。日経225先物の夜間は17:02の寄り付きで64,930円(現物9/10終値比−341円)で始まっている。SQ算出値と9/10終値65,270.95円の差、いわゆる幻のSQになるかどうかがその後の実勢を測る最初の材料になる。
注目カレンダー
- ★ 9/10 21:15 ECB理事会 + 21:30 米8月PPI — ECBは2.40%→2.65%が予想。PPIは前月比+0.4%/前年比+5.3%が予想(7月は+4.7%)
- ★ 9/10 米引け後 オラクル・アドビ決算 — JST 9/11 05:00頃。ORCLはEPS $1.73/売上191.3億ドル、ADBEはEPS $6.07/売上66.9億ドルが予想
- ★ 9/11 09:00 9月限メジャーSQ算出 + 21:30 米8月CPI — CPIはヘッドライン前年比+3.4%、コア前年比+2.4%が予想で、9/15〜16 FOMCの事実上の決定打